シリーズものBLでおすすめの作品

いつもは1巻で完結するBL作品を読むんだけど、たまには長く続く名作シリーズが読みたくなるときもある!

漫画と小説から一つずつ私のだいすきなBLシリーズを紹介します😊 ネタバレ注意。

 

丹下道『恋するインテリジェンス』シリーズ

公式サイトはhttps://tangemichi.com/intelligence/:こちら

 

まずは漫画の方。

過労などの労働問題、お堅い公務員、政界財界との結びつき…そんな官僚社会はもちろん男性社会なわけで……当然ながら男と男の痴情のもつれが生まれるんですね。外務省、財務省厚労省…と中央省庁の超エリートたちが出てくるんですが、エリートらしからぬ健気さ。金があっても権力があっても家柄が良くても顔がよくても仕事ができても、それじゃだめなんだ。男でも好きな男ができるとエリートという虚勢の男らしさは崩れてしまう。恋とエロに全力投球、自分の脆さ弱さを見つめ直した男たちだからこそ、エリート。強い男ってなんだろう?それが知りたければこのシリーズを読むべきです。

 

ポイントその① バディ制度 

各国の要人護衛任務、スパイ任務…なんでもありのKヶ関では、とにかく体を張って仕事をする官僚たちがいます。その特殊任務の一つに、トップとボトムに分かれたお色気バディ制度があります。ボトムが女装したり、カップルとして潜入したり、仕事の一環としてセックスしたり…訓練と称してセックスしたり…官僚ってなんだっけとなりますが、緻密な組織図や関係図が設定されているので謎の説得力がある。まさかほんとにKヶ関に存在するとかないよね!?働いてる官僚たちの「仕事もプライベートたも充実した生活」が描かれるので、応援したくなる。

 

その② キャラクターの魅力

「地球並みの長身肩幅太平洋超超大金持ち美形攻め×仕事のできる健気でかわいくてきれいな細身美人受け」のBLこそが真理と言わんばかりのカプ傾向。見た目で受け攻め完璧に二分でき、ボトム役は女装が似合うことが鉄則なことからもわかる通りカップリングがパターン化してるはずなのに、ぜんぜん飽きがこない。型の応用がもう黒帯レベル。BLの呼吸・壱の型だけですべてを終わらせる、王者が描くBL。

理由としては、受け攻めという枠に嵌めつつも個人個人のキャラクターの生育歴や性格、過去のトラウマがよく練られていること、カップルの関係性の「こじれた部分」と「乗り越え方」を多様に描いているからだと思います。それは仕事の失敗だったり、親からの重圧であったり、貧富の差であったりするのですが…

 

その③丹下道の漫画でしか味わえないスピード感

色任務にあたるバディのトレーニング通称「I倉実習」がちょこちょこ出てくるんですが、これがなんかめちゃくちゃ面白い。めちゃくちゃ本人たちは仕事と恋がかかってるので二重に真面目なんですけどやることやる実習なので、かなりオモロい。受けと攻めの体格差はもはや浮世絵のような様式美です。

私が今応援してるのは9巻から活躍し始めた春日×木菜ペア。クズ男後悔攻め×健気不憫美人受け。墓穴を堀ってばかりでI倉実習でさえも受けを掘れなかった本命童貞の懺悔が今後の楽しみです。

 

 

 

樋口美沙緒『ムシシリーズ』

小説です。

数千年前、生態系の危機に瀕した人類は、強い生命力を持つ節足動物門と意図的に融合をはかった。今の人類は、ムシの特性を受け継ぎ、弱肉強食の『強』に立つハイクラスと、『弱』に立つロウクラスとの二種類に分かれている。
イクラスの能力は高く、体も強いので、彼らが就く仕事は自然と決まり、世界の富と権力はいつしかハイクラスが握るようになった。
ムシの世界の弱肉強食が、人間の世界でも階級となって現れている……という世界観。

 

おすすめポイント

その①愛について考え抜かれている

2010年から今も続くムシシリーズ。

「愛とは何か?」

「愛で人を救えるか?」

「愛は何を傷つけたか?」

あらゆる答えはこのシリーズに詰まっていると言っていい。レイプシーンや妊娠・出産描写がが多いので読む時は注意が必要です。

「好き」も「愛している」も何の解決にもならない。むしろ傷つけ合うばかり。なのになんで、ひとは一緒に生きようとするのか? 

愛を決して美しさでまとめず、その暴力と汚さを書くのがBLなんだ!!!と殴られた気分になる。どれか一冊ではなく、シリーズ全体を通してこそ作品のエグみを味わってほしい〜。

 

その②志波久史という男

ムシシリーズで一番好き。愛の暴力性について痛いほど書いてある『愛の夜明けを待て!』

攻めの志波がアロマンティック的キャラクターなので、AroAce作品を読みたい人にもおすすめ。

「僕が愛せなくてかわいそうで、愛されなくてかわいそうに見えてたでしょ? 黄辺は……愛し愛されることが幸せだと思ってるから。そうできない僕が、憐れだったんだよね」好きなセリフです。

愛を返さないまま金や情や優しさだけを渡してくる志波を、黄辺は「酷い男だ」「こんなのは暴力と変わらない」と罵ります。けれども、愛を必要としない志波からすれば、恋や愛が当然あるものだと思って疑わないこともまた暴力なわけで…

志波のどこにも足を置かない世界との関わり方は、恋愛中心主義社会での居場所のなさでもあるのかなと思いました。

また黄辺も愛によってものすごく傷つきながらも愛について考え抜く男で、この2人のラストはムシシリーズの中でも大好きです。