키워서 잡아먹히기(育てて食われる話) 感想

 

 

みなさん韓国の電子書籍サイト、RIDIBOOKSを知っていますか? 漫画も小説もBLGLTLなんでもござれの宝の海です。

今回レビューするのはそんなリディで配信されている韓国BL小説です。

(リディブックスの登録・利用方法は他の方がたくさん解説してくださってるので割愛します〜)

 

『키워서 잡아먹히기』

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作者は까만고래先生(読み方はたぶんカマンゴレ、意味は黒クジラ、blackwhalle)です。先生のTwitterはこちらです→ 까만고래 (@blackwhalle) | Twitter


タイトル訳すと『育てて食われる話』といったところでしょうか?

私が紹介するBL小説なので内容はもうなんとなくおわかりかと思いますが、年下攻め年上受けの本格的なBDSM小説です。

 

あらすじ

攻め: カンヒョヌ 29歳

裁判所公務員。 エリートコースを進む道徳の教科書のようにまっすぐな男。その内面には、サディストでドムの傾向があるという、人に言えない鬱屈とした秘密を抱えている。


受け: チョンヘイン 34歳

インテリアデザイナー。 マゾヒストでサブの傾向がある。自分を支配する強力な相手を探している。欲望を隠すことがなく積極的。

 

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マゾヒストのヘインは本物を求めていた。強力な支配者を。セックスの関係ではなく、本当のSMプレイをできる相手が欲しいと、飲み仲間であるジョンウに嘆く。

またジョンウは、品行方正な後輩のヒョヌが酔った拍子に心の奥に支配的な欲望を抱えていることを知る。

ジョンウは迷わず2人を引き合わせることにするが……。

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感想(ネタバレ注意!!)

 


見どころその1 【理解ある友人】

まずヒョヌとヘインのキューピットであるジョンウが2人を引き合わせることになる場面が非常に秀逸です。

「俺には元々いつもそんな欲求がありました。 痛くして、苦しめて泣かせるような……。 俺は、俺はゴミです……」

人に言えない悩みを抱えたヒョヌは、暴力的な行為を犯しながら興奮する夢を見て悶々としていることを酒の力で吐き出します。

驚きつつも後輩をフォローするジョンウの一言👇

「俺のよく知ってるゴミを紹介するから元気出せ」

そうしてジョンウは、幼馴染のドマゾ野郎をかわいい後輩に紹介するのであった…

 

 

見どころその2 【育てること】

ジョンウの紹介で知り合ったはいいものの、2人にはさっそく問題がありました。

それは、ヒョヌが全くのBDSM初心者であったということです。完璧なドムを求めるヘインですが、外見は好みど真ん中にもかかわらずヒョヌはまだまだ遠慮がちです。ヘインはヒョヌに酒を飲ませ、夢の中でどんなプレイをしたのかとけしかけます。


マゾヒストのSubとして今まで服従的で受動的だったヘインは、ヒョヌを理想のDomに育てるために自ら能動的かつ主体的にプレイを先導し、持てる限りの技術を教え込みます。

物覚えの良い優秀なヒョヌもまた、どんどん自分で学んでヘインのためにがんばるところがすごくかわいいです。そんな一生懸命な年下の男に無意識に絆される年上の美人……というBLセオリーもきちんと踏んでいます。

支配と服従のロールプレイを行いながらも、実際の権力関係は逆という危ういバランスで前半2人の関係は成り立っています。

 

 

 

見どころその3 【忠実なBDSMプレイ】

R18のBLといえばアナルセックスですが、性器の挿入シーンがほぼありません。(記憶があやしいのと翻訳しながら読んだので定かではないが、アナルへの男性器の挿入は一回くらいでそれも攻めの射精なしだったと思う)

なぜかというと、性器による快楽ではなく、徹底的にBDSMプレイによる快楽に重きが置かれているからです。

プレイ中もむしろ攻めの快楽は二の次で、あくまで受けであるヘインの感じる痛み、苦しみ、恥、屈辱、それによって引き起こされる快楽が描写の中心です。最終的な決定権はSubにあるからこそ、そのセーフティネットが完全な服従を可能にするのです。それは作者先生がDomの責任や理性を描くことと、ヘインを思うヒョヌの忠実さを描くことを意識していたからだと感じました。


SMと銘打たれていながらも結局はイチャラブな恋愛セックスになだれ込む作品も多い中、最初から最後までBDSMだったので安心感がすごかったです。


わたしのお気に入りシーンは、呼吸コントロールプレイの一環でサブがマンション17階を階段ダッシュで登らされたところです。エレベーターあるのにわざわざ階段で、しかも着くのが遅すぎるとお仕置きどころかプレイやめて帰りますから……て言われてて最高でした。

 

 

見どころその4 【恋愛とBDSMの両立、およびそれらの暴力性について】

ヒョヌはヘインの優しさや美しさにどんどん惹かれていき、BDSMパートナーとしてだけではなく恋愛パートナーにもなりたいと願うようになります。

頑なに拒むヘインには、苦い思い出がありました。

後半では、ヘインの学生時代の元パートナーがストーカーと化します。はじめは男子大学生同士の恋愛から始まった関係は、生粋のマゾヒストのヘインが彼をSMプレイに誘ったことで徐々に歪み始めました。周囲にゲイだと知られてしまった元パートナーは、うまくいかない人生のストレスをヘインにぶつけていました。対等だったはずの恋愛関係は、SMロールプレイではない、デートDVへと変わってしまったのです。望まない過激な行為を強制されながらも、さまざまな負い目や恋愛的な情から別れられなかったヘインはどんどん傷つき弱っていきました。


Dom/Subに恋愛を持ち込むと理性のない暴力に変わる


そのつらい経験は、必要以上に他人と深く関わらない、恋愛しながらのBDSMはしない、という今のヘインを作りました。


セーフワードがなぜ必要か。命の危険すら伴うBDSM行為には、お互いの安心安全が基本です。"異端で異常な性癖"のBDSM文化はその暴力性を自覚的に認識しているからこそ、理性やルールを強調するのではないでしょうか。嫌なことははっきりと嫌と言える信頼関係でなければ、少しの苦痛もトラウマや怪我にもなりかねないからです。

一方、恋愛はどうでしょう。恋人だから、という理由で望まない行為に応じなければならなかったり避妊を拒否されたり、断ればDVを振るわれる。恋愛は対等に成り立つ関係だと見逃されがちですが、暴力的な側面もあります。

 

また少し話はずれるかもしれませんが、「人間は恋愛を経験することが当然である」「その先には性愛や生殖、そして結婚が当然ある」といった規範もまた、ときに暴力となりうるものです。「恋愛をしたくない」「恋愛に興味がない」「恋愛をしているが同じ感情を向けられたいと思わない」「恋愛と性愛は別」「フィクションの恋愛は好き」「恋愛がよくわからない」いろんな形があるのです。


「Dom/Subに恋愛を持ち込むと理性のない暴力に変わる」という言葉は、恋愛という一言で雑に覆い隠されている多くのものを曝け出すセリフでもあると思います。ヒョヌとヘインの関係は、BL読者を立ち止まらせ、恋愛とは何か?なぜ私たちはBLを読むのか?と問いかけてくれるものでもあるのです。

恋愛、D/S、どんな関係であっても身体的・性的・経済的・社会的・精神的……さまざまな面で人は権力構造の中にいます。その権力関係はいつでも、少しのことで暴力や抑圧に変わるかもしれないのです。


そしてそうならないために、ヒョヌとヘインは何度も衝突し話し合い契約のルールを決めて変えていくのです。つまりお互いを別の人間として境界を知り、お互いの希望や欲望について交渉し対話する、そうしてこそ初めて自分を受け入れようとしてくれるパートナーの意欲に気づくことができ、安全が保たれるのでしょう。

 
 

見どころその5 【食われる】

手のひらで転がしていたはずのかわいいワンちゃん。なんならちょっと優しすぎて物足りないな……そう思っていたのに完璧に育つのが年下攻めです。

ストーカーも撃退し、信頼で結ばれた2人はD/S関係だけでなく恋愛関係をも始めるようになります(ちょっとデミロマ的だよね!?)

BDSM行為は制限された空間でのロールプレイを超え、24/7の日常統制になっていきます。

ミッションの命令と遂行、それに伴う管理統制、調教や体罰……という繰り返しでプレイはレベルアップしていくのですが、初めは苦痛を与えてもらうためにわざと反抗して煽りまくっていた年上Subが開眼した年下のDomの前でガチの恐怖に震えて後悔しつつもドマゾゆえにその成長が悔しくもうれしい……こんなかわいいのにかっこよく完璧に育ってしまってこんなの服従するしかない……て床に膝をつく年上受けの法則を発揮しててそこもよかったです。


あとひとつ誤解されそうなので付け加えておくと、ヘインは元パートナーから暴力を受けたトラウマによる自傷行為としてSMにのめり込んでいたわけではないです。確かにトラウマではありましたが、誠実なヒョヌと一緒にBDSMの繋がりでその傷を癒し乗り越えていく成長の物語でもあります。ヘインはもともと頬を張られるのが1番好き、バニラ一切お断りというドマゾで血が滲むまで尻を多種多様なお道具で叩かれて興奮する、そういう人間なのです。開き直っていいのかはわからんが……。

 

 

BLの攻め/受けは役割として(能動/受動、男役/女役)とも捉えられることがあります。もちろん受動的な攻めもいれば能動的な受けもいますが、そこにBDSMが加わると(加虐/被虐、支配/服従)という別な尺度?も増えるのでバリエーション豊かで面白いです。外伝はif設定のDSリバ(※挿入方向はヒョヌ×ヘインでした)でこれも短いながら読み応えありました。

英語圏のM/M小説はBDSM要素が比較的多いのですが(だって発祥の地?だもんね)、BLとしての恋愛要素や"萌え"を求めて読むとやや物足りないときがあるというのがわたしの感覚です。

 

『키워서 잡아먹히기(育てて食われる話)』は、BL小説とBDSM小説、そのバランスをうまく取っている作品だと思います。

外伝含め47話でサクッと読めて、かつ4500ウォン(なんと500円以下!)で読めるのでおすすめですよ♪

 

 

あと

ここまで書いといてなんだけど、ぜんぶ翻訳アプリで読んでるのでところどころ齟齬があったり人物名の読み方が違うかも知れん……ネットの情報は鵜呑みにしないでください。この記事は個人の感想です。