わたしの好きな人狼BL

 

 

今までに読んで心に残っている人狼BLを3つ紹介します。

まずひとつめ〜!

 

 

このWith or Withoutシリーズの人狼たちは、アルファをリーダーとする群れを作り、人間社会に溶け込んで暮らしています。運命の相手「メイト」という設定や、ベータ、オメガ、本能……一見するとオメガバースとも似た設定ですね。もともと「オメガバース」は英語圏の二次創作が発祥の設定であるらしく、狼の群れの社会性がモデルになっているそうです。ですので、本家本元(?)の文化圏の人狼オメガバースを読めると思うとワクワクするものがあります。
 アルファ、ベータ、オメガは性別ではなく、群れにおける役割や能力のことを表していて上下の関係ではあるのですが、必ずアルファとオメガが「メイト」になるわけではありません。With or Withoutシリーズではメイトとの出会いや対等な関係性、本能的な興奮がものすごく情熱的に語られます。体感的にはチェイとキートンが8.5割セックスしていました。 
 そんな「メイト」ですが、群れの中でのマジョリティは「人狼の男性×人間の女性」です。人狼は男性だけで、つまり変身できるのも狩りにいけるのも男性だけというすげえホモソーシャルです。ということもあり、メイトとの恋愛や絆だけでなく、ゲイやゲイカップルの受ける偏見や差別、家族へのカミングアウト、人種の違い、群れの違いといった葛藤も描かれています。アメリカ社会の複雑さやマイノリティの立ち位置が反映されていて、
2巻のジェイクとレミ、3巻のオーブリーとマットの物語まで読むと、ロマンスとセックスの中にもいろんなメッセージを感じることができます。
 同性愛嫌悪を内面化したクローゼットゲイの苦しみ、子どもの貧困・虐待や家父長制の抑圧。M/M作品は、登場人物がある思想や性格を持つに至るまでの人格形成や生育環境まで繊細な背景が練られていることが多いです。男同士の愛が育まれる中で自らのホモフォビア
Toxic Masculinity(有害な男らしさ)に向き合って、お互いの弱さをさらけ出し弱い自分を認められるようになる、そして父親に立ち向かうという解放と戦いの物語。その過程で母親や女性は殺されたり排除されたり、そこはBLと似たねじれた構造があると感じます。エンパワーメントではあるけど、女の物語ではない。熱狂しながら阻害される。
 チェイがすごく魅力的な男なのでめっちゃ好きなんですが、私は物語としては2巻のジェイクとレミのストーリーがお気に入りです!レミが自分のアイデンティティを受け入れ癒されていく過程も、BDSMの要素もあって、おすすめです!

 

 

 ふたつめはこれ。

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 「この子が今何を考えているか、聞くことができたら……」「だいすきな愛犬とヒトの友だちのように暮らせたら……」犬好きならば一度は考えるであろう夢が、本当にある! しかもM/Mで! という素晴らしい作品です。マッドクリークという小さな街、ところがその街には人間に変身できる犬たちが暮らしているという秘密があり……!?

 この作品のどこがいいかって「犬と人間の絆」が描かれるところなんですよね。たとえば1巻のティムは負け犬人生から逃げるようにしてマッドクリークに引っ越して来たのですが、「チャンス」という犬と生活することで傷ついた心を癒されていきます。実はチャンスの正体は、ティムをマリファナ栽培人だと疑う保安官のランスなのですが、犬として接するうちにランスもティムの優しさやタフさを認め、惹かれるようになっていきます。基本的に人狼×人間のBLなのですが、ヒトとしての感情と犬としての感情、その両面があってこそ人狼のキャラクターが映えるというか……

 マッドクリーク育ちで保安官のランスは人間寄りの生活が身についているんですがものすごく仲間思いだったり、2巻のローマンは軍用犬として生きてきた機関が長いだけに慣れない人間生活に苦戦していたり……とBL好きと犬好きが同時に満たされる作品です。これもやっぱり2巻がすき。事件の構成や心理描写も面白いです。原作も翻訳もkindleアンリミテッドに入っているので、両方を読み比べても楽しいです。冬斗先生の翻訳にうならされます。モノクローム・ロマンス文庫のシリーズ続刊をずっと待ってます。

 

 

みっつめ~!

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 echo先生のドギーシリーズ。もう好きすぎて何も言えないよ……。

 わたしはこのマイリトルドギーを読みながら死んだ愛犬を思い出しドバドバに泣く経験をしました。「トーマの心臓」や「バナナフィッシュ」を読んだときと同じくらい泣いたんですが、意味は正反対でハッピーな泣き方でした。.Bloomもわたしの中で好きなBLレーベルになりました。美形ドーベルマン支店長とデキる営業マン大山の「マイオンリードギー」の方がカップリング的には好みだったんですが、もうどっちもとにかくこの世の犬はみんなしあわせになってほしいとおもいました。

 

以上です。